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水の月
作: ゆうやん様

〜ファーレンハイトとベルタ編〜

「まったく、どうして豪華な調度を見ると必ず査定しないと気がすまないのかしら?」
エメラルドグリーンに輝く海の上に浮かべたマットレスに載ってベルタは誰にともなく呟いた。
ベルタがいるのはヴァルブルグ子爵家がフェザーン近辺の惑星に新たにオープンしたリゾートコテージのインペリアルタイプである。
オーディンに最初にオープンしたそれはロイエンタール元帥が新婚旅行を行ったことで有名になり、とある施設の存在とともにいまや予約で1年は待たねばならない。
今回フェザーンにオープンしたそこをファーレンハイトとベルタは訪れていた。
最初は普通に宿泊を申し込むつもりだったのだが、ファーレンハイトの名を聞くとヴァルブルグ子爵自らが招待状を送ってくれた。
モデル並に女性に人気のあるファーレンハイトが泊まったとなれば、『例の施設』に縁のない女性のみの団体客の需要も見込めるというものだ。渡りに船とはこのことである。

で、さっそく利用してみたのだが、ファーレンハイトの貴族的に端正な容貌とかけ離れた現実感たっぷりの反応にベルタがついにキレて、
スレンダーなボディをさらして一人日光浴をする、という事態になっている。ちなみにファーレンハイトのほうはまだ施設のチェックに余念がないらしい。
結局、夕食の支度が整うまで、海やジャグジーで一人暇をつぶす羽目になったベルタだった。

夕食のメニューは甘エビとホタテのカルパッチョにえび、イカ、ホタテのシーフードパスタで、下ごしらえをすませて届けられた食材をいつものようにファーレンハイトが調理した。
ワインのボトルを手に取ろうとしたベルタを軽くファーレンハイトがさえぎる。
「これから予定があるから、アルコールは控えておいたほうがいいぞ。」
「予定?」
「例の部屋。日が沈んだ後がいいんだそうだ。」
そう言って笑みを見せるファーレンハイトに軽く舌を突き出し無視してワインを注ごうとしたが、職業上低重力酔いに心当たりがないわけではない。
結局ベルタはボトルを戻して食事を始め、それを見たファーレンハイトは満足そうな表情を浮かべた。


夕食を終えて、シャワーで汗を流すと、件の重力制御室のある建物へと移動する。誰もいないとはいえ素っ裸での移動にはお互い抵抗があったので
続き部屋となったバスルームに入って服を脱ぐ。最初はそのまま移動するのをためらったベルタだったが、からかうような笑みを浮かべたファーレンハイトの顔を見ると半ば意地を張った様子で制御ルームに入ってきた。
「人間の探究心というか、快楽を追及する欲望の旺盛さは・・・まったくもう感心に値するわ。」
パンフレットで低重力室の広さは確認していたが、あらためて室内に入ったベルタがこう嘆息した。
「なんだかんだ言いつつ、お前嫌がってないじゃないか。早くこっちに来いよ。いくらなんでもこの体勢はなかなかに情けないものがあるんだぞ。ほら制御解くぞ。」
一糸まとわぬ姿をさらけ出し続けることはなかなかに抵抗があるらしいファーレンハイトが手招きをするのに、近づいてぴたりと抱きついた。
「訓練以来だから、ちょっと心配。うん。でもなんとかなるんじゃない。私運動神経あるもの。」
そう言いながらも重力の制御が始まって体が浮いた途端、ベルタがファーレンハイトの首にしがみついた。
「ほぉ。大丈夫とか言いながらかわいいもんだ。」
「しかたないでしょ。アルと違って異重力の現場経験ないんだから。・・と、離しちゃダメ。あ、やだ。なにこれ。もう。」
「俺に頼ってきておきながら、そういうことを言う口はこうしておくか。」
そう言ってあごを軽くつまむと、ベルタの唇を自分のそれで塞ぐ。
ベルタの体を抱きしめたまま、ファーレンハイトはバランスを取りながらオールパノラマの水族館を漂う余裕を見せている。
かたやベルタの方は最初の自信はどこへやら、不安定な体勢に知らず知らずに彼の体にしがみつくように抱きついていた。
(これは、オススメのとおりなかなかによいのではないか・・・)
付き合って10年以上という長さになると、知らず知らず馴れ合いの部分が大きくなってくる。
そんなベルタが久しぶりに見せるどこか初々しく自分を頼ってくる姿にファーレンハイトの中でスイッチが入った。

「ふと、思ったんだが、低重力で浮いていられるということは・・・だ。こういうことも可能というわけか?」
そう言うとファーレンハイトはベルタの体をつと離し、体を入れ替えると背後に回った。
「ちょっと!何考えてるの?」
「言わないとわからないか?今更?」
耳朶を甘噛みしながら手や指を自在に動かされてベルタの息が上がってくるのを確認すると、ファーレンハイトは誰にも見られず一人ほくそ笑むのだった。
自分の出した声が思いもかけぬほど特殊ガラスのドームに反響するのに耳を塞ごうとするベルタの手を押さえつけ、
歯を食いしばって声をこらえようとする唇を自分の舌先でなぞっていく。
丹念な愛撫に固く結ばれていたはずの唇が開くと、止めようもなく鳴き声がこぼれ始め、ファーレンハイトの端正な顔に好色な笑みが浮かんだ。


(月が…泣いてるみたい・・・)
ファーレンハイトの首に腕を回して抱き付きながら、いつものように瞼を閉ざす事なく空を見た。海水を通してみる月が泣いているように揺れている。
ふとファーレンハイトが目を開けた。途端にベルタと目が遇うと苦笑した。
「あんまり見るなよ。俺のことだけ考えてろ。」
大きな手が視界を遮り、手や指が全身を探るにつれて酔ったようにすべての感覚が曖昧になっていった。

「・・・あの夜会で面白い携帯サイトを教えてもらったってビアンカが、・・・アルが『見かけによらず意外と性豪』って。コドモの遊びって馬鹿にしてたけど、あながち・・・外れてないのかもしれない・・・。」
久しぶりに新鮮さあふれる情事を堪能し、通常の重力に戻した室内の特殊マットレスの肌触りを楽しんでいると珍しく少々掠れた声でベルタが呟いた。
まだ少し呼吸は乱れているし、薄茶色の瞳は潤んでいて頼りなく儚げにすら見える。
「何を今更馬鹿なことを言ってるんだ。そうか。ならば実力を実地で体験してもらうこととしようか?」
そう言って笑ったファーレンハイトの頭をベルタは思い切りマットレスに押し倒し、じゃれあいがまた始まった。
第二ラウンドは通常重力下、海の底になりそうだった。
水をくぐった月光が揺れながら戯れる二人に注いでいた。

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ファーレンハイト氏のご感想
まぁ、最近マンネリと思わないでもなかったので、この種の体験はなかなかに貴重なものがあったと思う。その点文句なし。
だが、そういう施設をメインにするなら寝室は1つでもいいのでは?こんなところで別々に寝る阿呆もおらんだろう。
もう少し経済効率の追求をしたほうがよいのではないか?
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