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エルフィーでハーレクインもどき書いてみる(9)
「元帥閣下に、お礼を申し上げねばなりませんね」
 晩餐の席で、シャフハウゼン子爵夫人は、そう言って、さりげなく世慣れぬ少女を諭した。
「ええ・・・」
 エルフリーデは、内心の不満を胸の奥に押し止めて、素直に頷いた。
 ロイエンタールは、帰宅が遅くなるとのことだったので、エルフリーデは、執事に命じて朗報を齎してくれた子爵夫妻に、シュヴァイツァー夫人も同席で夕食を振舞った。
 エルフリーデの本心を言えば、これは結婚と引き換えの取引であり、互いにそれを実行したのだから、礼を言わねばならぬ筋合いはない。
 しかし、自分を心配してくれる優しい子爵夫人の心をこれ以上掻き乱したくなかったし、何より流刑に処された一族全員が早々に開放されたのは嬉しかった。少々不本意ではあったが、「あの男」に一言礼を述べてやってもいい。そう思った途端、昨夜のロイエンタールの姿が脳裏に浮かび、エルフリーデは思わずフォークを持つ手を止めて顔を赤らめた。
 明け方、自分の部屋を去っていく男の背中をぼんやりと視界に捉えて以来、まだ一度も顔を合わせていなかったことに気づく。あと数時間も経ったら、あの男は帰宅するだろう。そうしたら、いったいどんな顔をして迎えればいいのだろうか・・・
「どうかなさいましたか?」
 シュバイツァー夫人の心配そうな声に我に返る。
「いえ、何でもないわ」
 エルフリーデは、そう言って、再びデザートのタルトを口に運んだ。


 午後9時少し前に子爵夫妻を見送り、自室で来週から再登校することが決まっている学校の授業の予習を始めようとした矢先、ロイエンタールが予想外に早く帰宅した。
 エルフリーデは、仕方なく教科書を仕舞うと、階下のサロンへ降りていった。
 ロイエンタールは、軍用ケープを執事に預けると、侍女を伴って優雅な所作で階段を降りて来る新妻を、皮肉な笑みを浮かべて見上げた。
 彼は今日、周囲の勧めに渋々従って定時で統帥本部を退庁したが、何となく真っ直ぐ自邸へ帰るのが躊躇われ、ミッターマイヤー家を訪れていた。しかし、いつものように、そのまま日付の変わる時刻まで飲み明かすつもりでいたところ、白ワインを1本空けたところで、良き家庭人である親友に、「新婚だろ」と言われて、早々に追い出されてしまったのだった。
「元帥!」
 目の前の女が、大気圏最上層の青い瞳で睨む。
 エルフリーデには、まだ、夫となった男の名を呼ぶことも、「あなた」(マイン・リーヴェ)と呼びかける勇気もなかった。
「今日、シャフハウゼン子爵ご夫妻から聞きました。一族の者達全員を流刑地から戻して下さるよう、元帥から皇帝陛下にお願いして下さったとのこと、お礼を申します」
 エルフリーデは、一気にまくし立てると、ふいと身を翻して、今降りてきたばかりの階段を足早に上って、自室に駆け込んだ。
 二人の侍女が、呆気にとられて、ロイエンタールに申し訳なさそうに軽く会釈すると、慌てて女主人の後を追った。
 ロイエンタールは、苦笑しながら、昨夜自分に、満足感とその万分の一程の罪悪感を同時に与えた少女の後姿を見送った。


 エルフリーデは、自室のソファに腰掛けると、侍女達に気づかれぬよう、胸に手を当てて動悸が収まるのを待った。
 やはり、あの金銀妖瞳とまともに眼を合わせられない。
 エルフリーデは、侍女達を退がらせると、クッションに身を預けた。
 暫くそうしてまどろんでいると、樫の扉が開き、長身の影が床に投げかけられた。
 エルフリーデが、身じろぎして上体を起こすと、ロイエンタールは、扉を後手に閉めてゆっくりと近づいてきた。
 力強さとしなやかさの完璧な均衡。
 剛々しさと典雅さの優れた調和。
 エルフリーデの眼は、持ち主の意思に反して、その姿に吸い寄せられてしまう。
 そのことが、彼女にはどうにも悔しかった。
「美しい手だ」
 気づくと、彼女のか細い右手首は、男の強靭な掌にに握られていた。
 微かにアルコールの匂いがする。
「俺の母親の手も、それは美しかったそうだ。最高級の象牙を彫り上げたようにな。他人の為に、一度だって動かしたことのない手だった。初めて我が子を抱き上げた時は、片目をナイフで突き刺そうとした時で、無論、それが最後だった」
 エルフリーデは、呼吸を止めて青い瞳を最大限に見開いた。
 そして、今まで腑に落ちなかった事について、漸く合点がいったのだった。
 ロエンタールとの結婚が決まって以来、エルフリーデは、自分と同じ伯爵家から嫁いで来たという先代夫人に対して大いに興味を持っていた。
 肖像画を見て、類稀な美女だということは一目で解ったが、その人為について、家令や執事に幾度となく尋ねても、一様に歯切れが悪く、上手く逃げられているような印象を拭えなかった。その疑問が、今のロイエンタールの言葉で一気に氷解したのだった。
 エルフリーデの脳裏に、一瞬、我が子の目にナイフを突き付けている貴婦人の姿が浮かび上がった。
 しかし、次の瞬間、彼女の唇から吐き出された言葉は、目の前の男への同情とは程遠いものだった。
「残念だわ。お前の母親が失敗したことがね。母親は我が子が大逆の罪を犯すことを予知していたのよ。だから社会の為に私情を捨てて害を除こうとしたのだわ。立派な母親に不似合いの息子だこと」
 この男が、家庭的には必ずしも幸福でなかったことは判ったが、罪もない人間を処刑し、簒奪に加担したことをどうしても許すことができなかった。
「もう少し推敲すれば、墓碑銘に使えるな」
 ロイエンタールは、皮肉な声でそう言うと、手を離した。
「俺には理解できんな。父親の代まで持っていた特権を失ったのが、それほど悔しいか。お前の父親や祖父は、自分の労働の成果でもないのに、毎日遊んで暮らしていたわけだろう?」
 壁にもたれて考えながらそう言う男に、エルフリーデは激しい反発を覚えた。
 父も、亡くなった祖父も遊んで暮らしていたわけではない。他家の事情は知らないが、代々優秀な官僚を輩出してきたリヒテンラーデ一族の男は、皆伝統的に、帝国の最高学府である国立帝都大学を出て、省庁で相応の役職に就くか、領主として施政に勤めるかどちらかだった。少なくとも、何もせずにただ領民から搾取して贅沢に暮らしている親族をエルフリーデは知らなかった。
「そんな生活のどこに正義がある?貴族とは制度化された盗賊のことだ、と、まだ気付かないのか?暴力で奪うのは悪だが、権力で奪うのはそうではないとでも思うのか!?」
 エルフリーデが反論の言葉を発するより早く、ロイエンタールは畳み掛ける。
「だが、その前にひとこと言っておく。この世でもっとも醜悪で卑劣なことはな、実力も才能もないくせに相続によって政治権力を手にすることだ。それに比べれば簒奪は一万倍もましな行為だ。少なくとも、権力を手に入れる為の努力はしているし、本来、それが自分のものではないことも知っているのだからな」
 エルフリーデは、暫し呆然として男を見上げた。
 この男は、実力があれば臣下が主君を斃すことを肯定するのか?
 そんなことを繰り返していては、何時まで経っても臣民が平和に暮らせる世の中など訪れない。第一、そこまで血統による統治を否定するなら、なぜローエングラム王朝の建国になど手を貸したのか?
「よく判ったわ。お前は骨の随からの叛逆者だということが。自分にそれ程実力や才能があると思うなら、何だってやってみるといい。そのうち、思い上がった挙げ句に、今の主君にだって背きたくなるでしょうよ!」
 エルフリーデが全力で浴びせたはずの罵声に、ロイエンタールは、異なる色の瞳に興味の泡を弾けさせた。
「皇帝は、俺より九歳も若いのに、自らの力で全宇宙を手に入れた。俺はゴールデンバウムの皇室や大貴族どもに反感を抱きながら、王朝それ自体をくつがえそうというまでの気概を持つことは出来なかった。あの方に俺が及ばぬ所以だ」
 エルフリーデが反論の言葉を失っている間に、ロイエンタールは背を向けて部屋を出て行った。
 その後ろ姿に目を奪われて見送っていると、エルフリーデは、男が振り返ることを期待している自分に気が付いた。
『そんな・・・!』
 エルフリーデは、一瞬でも憎んでいるはずの男の視界に入りたいなどと思った自身を嫌悪した。


 一時間ほど後、就寝の身支度を終えたエルフリーデの部屋に、再びロイエンタールは現れた。今度は昨夜と違い、ガウン姿だった。
 拒む理由も見つからず、エルフリーデはこの夜も辛い義務に耐えた。
 奇妙なことに、行為は昨夜よりも更に激しく、執拗なものだったにも関わらず、痛みは少なかった。
 それが何を意味するのか、エルフリーデは考える間もなく睡魔が襲ってきた。


 翌日、キュンメル事件で自主謹慎中だった為、結婚式に出席できなかったマリーンドルフ伯爵家から祝いの品が届いた。
 贈られてきたのは、鳥と木が描かれている少し変わった作風の水彩画だった。
「どうせなら、後々まで印象に残るよう何か変わったものを贈られては?」という親族の骨董趣味の男爵の提案で、古代地球で繁栄を誇った東洋地域のとある国の伝説に由来するものが選ばれた。
「比翼連理(ひよくれんり)と申します。比翼という鳥は雌雄それぞれ一目一翼のため、つねに並んで一体となって飛ぶといわれます。連理の木はニ本の木でありながら、枝が連なって一本となり、木目も相通じているとされます。いずれも旧暦の昔に、ともに男女の契りの深さに例えられた伝説上のものです。元帥閣下ご夫妻には、この絵の如く末永く仲睦まじくとのマリーンドルフ伯とご令嬢の願いが込められております」
 画商の説明に、ロイエンタールは思わず苦笑したが、それでも、皇帝が信頼する首席秘書官と国務尚書の祝いの品を拒絶する理由もなく、型通りの礼を以って受取ると、執事にどこか適当な場所に飾るよう命じた。
 皮肉な思いはエルフリーデとて同じだった。
 この男と「末永く仲睦まじく」など有り得るはずもない。元々自分達には愛情など一ミリも存在しないのだから。
 この男と自分との結婚は、単なる契約だ。
 そう思った瞬間、エルフリーデはふと疑問が湧いた。
 自分には、この結婚によるメリットが確かに存在した。現に流刑に処された一族が、思いの外早く放免されて帝都に戻ってくるのだ。しかし、あの男にとってはどうだろうか? 今まで一族の赦免を実現させることで頭がいっぱいで、深く考えたことがなかったが、よく考えれば奇妙な話である。
 通常、爵位を持つ女性と持たない男性が結婚する場合、女性の爵位を男性側も名乗ることができるのだが、ロイエンタールは伯爵号を辞退した。
 これは、コールラウシュ伯爵が、今後、エルフリーデの直系子孫のみに継承されていくものであり、万が一ロイエンタールが別の女性との間に庶子をもうけても、その子には相続権がないことを意味していた。エルフリーデにとっては、有り難い限りだが、領地と財産の大半を失い、名ばかりに等しい爵位すら受け取らないでは、女伯爵と結婚する意味がまるでない。エルフリーデは、結婚後は二重姓を名乗り、エルフリーデ・フォン・コールラウシュ・ロイエンタールというのが正式名となっている。結婚後も公式非公式に関わらず、「ロイエンタール夫人」よりも「コールラウシュ伯爵夫人」と呼称されることを望んでおり、周囲もそれに従っていた。
 ローエングラム王朝は、ゴールデンバウム王朝時代の貴族制度をあえて廃止しなかったものの、実際は有名無実化していた。今や旧王朝の爵位や門閥がブランド力を発揮するのは、フェザーンの成金商人あたりに対してだけだと言われている。まして、現体制で元帥という軍部に於いて皇帝に次ぐ地位に登りつめたロイエンタールにとって、今更旧王朝の爵位など価値がないことは、誰の目にも明らかな事実だった。
「まあ、いいわ。あの男が何を考えて結婚したかなんて。私を愛しているからでないことだけは確かなのだから。あの男が何か企んでいるにしろ、とりあえず今は、マリア・アンナ達を迎える準備をしなくちゃ」
 エルフリーデは、そう一人ごちて、この件に関しての思考を停止させた。


 結婚一週間後の7月16日、この日の朝、エルフリーデは、約二年ぶりに新調した女学院の制服に袖を通した。
 二年前まで毎日着慣れた服の感触を噛み締めながら、漸く訪れた平和な日常に、エルフリーデの心は弾んだ。
 リップシュタット戦役で一時閉鎖となった貴族女学院の中等科は、新王朝発足と同時に再開され、来月には、内戦で卒業が保留されていたエルフリーデ達の学年と、一級上の学年、それに一級下の現最上級生とを合わせた三学年合同での卒業式が挙行される予定だった。
 それに先立ち、未履修科目の授業をカリキュラムを詰め込んで行うことになった。結婚準備とその後の多忙で登校できなかったエルフリーデも、この日、やっと懐かしい級友達と再会できることになったのだ。
 丁度、統帥本部に出勤しようとしていたロイエンタールとも時間が重なり、方向が同じだしご一緒されてはと、家令が勧めた。
 エルフリーデは、出来ればこの男とこれ以上狭い空間を共有したくはなかったが、無下に断るのも大人気ないと思いなおして了承した。
「奥様に、お客様がお見えです」
 侍女の一人がそう告げに来たのは、支度を終えて、玄関ホールに向おうとしたその時だった。来客は、今まさに登校しようとしている貴族女学院の事務長だとのことで、エルフリーデは怪訝に感じながらも、一階ホール脇の小応接室で対面することにした。
「コールラウシュ伯爵夫人には、ご健勝のことお慶び申し上げます。また、この度のご結婚、誠におめでとうございます」
 エルフリーデも顔だけは知っていた五十代半ばと思しきその男は、どこか所在無げに視線を泳がすと、慇懃に挨拶を述べた。
「ありがとうございます。・・・・それで、本日のご用向きは?」
 エルフリーデが尋ねると、事務長はポケットからハンカチを取り出して、額の汗を拭きながら視線を外した。
「実は、伯爵夫人、・・・・誠に申し上げ難いことながら、昨日の臨時理事会の結果、あなたの再登校は、認められないことに決まりました。残りの単位に関しましては、オンライン授業を受講なさるか、教師をお邸に派遣する形で取得頂ければ、卒業証書自体は、発行いたします。また、上級科へ進学も、推薦できないということに決まりました」
 エルフリーデは、事務長の言う意味が瞬時には理解できず、数秒の間押し黙ってしまった。
「それは、奥様に女学院に来るなということですか? いったいどういう理由で? 奥様が、どんなにこの日を楽しみにしておられたことか・・・」
 先に怒りをぶつけたのは、脇に控えていたシュヴァイツァー夫人の方だった。
「わ、私は、理事会の決定をお伝えしに来ただけで・・・」
 事務長は、案の定、逃げ腰になり、更にハンカチで頬を拭った。
「その理事会とやらは、いったい誰と誰のことですか? 元帥閣下にお願いして撤回して頂きます。第一、何の理由でこんな理不尽を・・・」
 シュヴァイツァー夫人は、女主人を守る為に、帝国元帥の権威を振りかざすという彼女らしからぬ威嚇に出た。
 普段温厚で物静かな夫人の怒声に、部屋の外で他の使用人達も一斉に聞く耳を立て、出勤しようとしていたロイエンタールも思わず足を止めていた。
「当オーディン貴族女学院では、開校以来、既婚者が在籍した例がありません。こればかりは、いかに元帥閣下と言えども、翻すことはできません」
 ローエングラム体制になって以来、民政省は、学制改革にも着手しており、旧体制的な校風の名門校にも新風が吹き込むようになった。最も顕著な改革の例は、出身階級による入学制限の廃止を義務付けたことである。従って、貴族女学院も、来年度から名目上、下級貴族や平民にも門戸が開かれることとなる。
 しかし一方で、『教育の場の独立』という開明的観点から、各校独自の習慣や校内の自治を尊重する布告も皇帝の名で出されていた。四百年の歴史を誇る貴族女学院でも、ここが正念場とばかりに、理事会は伝統と旧習を堅守する構えだった。
 事務長は、相当の反発は覚悟していたのか、声を震わせながらも一歩も引かない姿勢を示した。彼にしてみれば、エルフリーデにこの件を伝え、納得してもらわないことには、理事達の手前、学院に戻れない思いなのだろう。それが伝わったのか、シュヴァイツァー夫人は、一息吐くと、いつもの落ち着きを取り戻して問うた。
「前例がないなら、奥様を最初の例にすればいいではありませんか。奥様は、成績も優秀だと伺っておりますし、学院の名誉を汚す行いをしたわけでもありません。登校して何の不都合がありましょう?」
「それは・・その・・、風紀上の問題もありますし・・・・」
 事務長が再び視線を逸らし、言い難そうに小声で呟いた。
 その一言で、エルフリーデは理解した。
 そうだ。自分はもう、級友達と同じ清い身体ではないのだ。
 毎夜あの男に組み敷かれ、仇の男の刻印を押された穢れた存在なのだ。
 そんな自分が、級友達の中に入れるはずが無い。
「ほう、小官の妻が登校すると、風紀が乱れると、卿は言われるのか?」
 突然、ドアが開き、一連のやり取りを聞いていたロイエンタールが冷笑と共に現れた。
 彼は腹を立てていた。この女の学校のことになど、全く興味はないはずなのに、ドア越しに聞こえた会話に、なぜか怒りがこみ上げた。だから思わずドアを開け、小心な事務長に、余りにも有名な金銀妖瞳を向けたのである。
 誰もが知る帝国軍随一の名将の登場に、事務長は、気の毒なくらい狼狽し、身を縮めた。
「わかりましたわ」
 尚も何か言葉を発しようとしているロイエンタールとシュヴァイツァー夫人に被せるように、エルフリーデの凛とした声が響いた。
「理事会の決定に従います。本日は、わざわざお運び頂き、ありがとうございました」
 伯爵夫人としての威厳を精一杯保ち、優雅なおじぎを返したエルフリーデだったが、最後の方は声が震えていた。
 事務長は、ほっと安堵の表情を浮かべ、そそくさと帰っていった。
「ふん、下らん連中だ」
 ロイエンタールが侮蔑も顕にそう吐き捨てるように言うと、エルフリーデはキッと彼を睨み付けた。
 くだらない連中・・・・くだらない世界・・・・そうだ。確かにその通りかもしれない。でも、エルフリーデにとっては、大切な自分の居場所だった。その世界から、拒絶されてしまった。その喪失感と絶望感は、テロで家族をいっぺんに失った時以来のものだった。
「お前に何がわかるの!」
 青い瞳に溜まった涙を見せまいと、顔を背けたエルフリーデは、そう叫んで部屋を駆け出ていった。
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