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イノセント・プリンセス(6)
 久々にオーディンに帰投した父から、ラインハルト・フォン・ミューゼルと、ジークフリード・キルヒアイスという2人の少年の名前を聞いた時、ベアトリスはまだギムナジウムに通っていた。
 彼等の活躍により、父が艦長を務めるハーメルンIIは、敵側の貴重な情報を土産に、部隊でただ一隻イゼルローン要塞に帰投した。
 その功績により、2人は昇進して転属していったらしいが、上官であった父も中佐に昇進し、同時に、就任以来ずっと素人の父に代わって艦の実質的な指揮官だったベルトラム大尉(二階級特進で中佐)が戦死したことも告げた。
 ベアトリス達は、ベルトラム大尉とは面識がなかったが、軍隊という慣れない組織の中で、ずっと父を補佐してくれた人物の死を悼んだ。同時に、自分とそう歳の違わない少年2人の働きに聞き入り、好奇心を刺激された。
「彼等はいずれ、大きなことを成すかもしれない。これは私の勘だがね。もしかしたら、数年もしないうちに、彼等の方が私の上官になるかもしれないな」
 そう言って静かに笑った父の目が、意外な程真剣だった。
 一緒に話を聞いていた母は、「いくら何でも、まさかそんな」と言って一笑に付したが、ベアトリスは、瞳を輝かせた。
 確かに、そのミューぜル中尉(昇進して大尉になっていた)とやらが、いくら寵姫の弟だからといって、父の階級を追い越すには、姉の威光が働いたとしても、十数年はかかると見るのが当時の常識だった。
 通常の昇進ペースでいけば、一階級登るのに、早くても数年はかかり、異例の昇進があるとすれば、何らかの武勲を立てる必要がある。そして、如何に戦時下とはいえ、一人の人間が軍功を上げ、無事に帰還できるような機会は、一生のうちに何度も巡ってこない。
 しかし、父の予見した通り、いや、それ以上のスピードで2人の少年は、一気に階級を駆け上がり、再びその名を聞いたのは、それから僅か2年後、「ミューゼル大将という寵姫の弟が、この度の第4次ティアマト会戦で多大な軍功を上げ、上級大将に昇進し、ローエングラム伯爵家の名跡を継ぐ」というニュースがオーディンを席巻した時だった。
 ベアトリスは、ヘレーネと共に大学に合格したばかりだった。
 もはや、父の階級を追い越すどころか、遥か雲の上の人となったかつての部下の少年達の活躍を、大佐となっていた父も心から喜んでいる様子だった。
 やがて、ローエングラム伯となった「元ミューゼル中尉」は、アスターテ会戦の大勝利で遂に若干20歳で帝国元帥にまで登り詰める。
 そして、フリードリッヒ4世の崩御と共に、爵位を侯爵に上げると、宰相となったリヒテンラーデ公と手を組み、枢軸派としてブラウンシュバイク公とリッテンハイム候を中心とする門閥貴族派と、対立を深めていった。
 この時期、宇宙艦隊司令部へ転属し、オーディンに帰還していたアデナウアー男爵は、自身の信念と、身内への義理との間で葛藤していた。
 彼個人の気持ちとしては、ローエングラム陣営に馳せ参じたいのは山々だったが、義妹であり、アデナウアー家にとっては恩人でもあるギゼラが、ブランシュバイク一門の貴族と結婚していることもあり、立場上はそちらに味方しなければならない。
 だが、門閥貴族の多くが、リップシュタットの森へ集まり、一触即発の空気の中、当のギゼラが、突然邸を訪ねて来た。
 彼女は、義理の兄に対して、すぐにローエングラム候に忠誠を誓うか、適当な理由をつけてどちらにも味方しないことを強く勧めた。
 アデナウアー家は、元々私兵を持つ程の大貴族でもなく、曽祖父の代からの事業は、父の代になって徐々に縮小していた。権門へ賄賂を送って利権にありつき、かなり強引な方法で拡大していたのを、温厚で他人を押し退けるような真似をしたくない性質の父が、自主的に経営権を譲渡したりして、男爵家としての最低限のものを残して手を引いたのである。
 このような、戦力にならない貴族が味方しようがしまいが、ブランシュバイク公もローエングラム候も関心を示さないだろうというのがギゼラの見解だった。
「これだけは言えるわ。もし、戦争になれば、ローエングラム侯側の大勝利に終わるでしょう。こちらは、数は多くても、殆どが素人の集まりです。身分や爵位で砲弾が避けられるわけじゃないでしょう?」
 この平民生まれの聡明な元宮廷女官は、戦局を冷静に分析していた。
「私の判断ミスだったわ。皇女の夫には、もう少し賢い男を選ぶべきだったわ」
 ギゼラは、そう言ってしきりに20年以上前の選択を後悔した。
 当初は、ブラウンシュバイク公夫妻の結婚のお膳立てをした人間の一人として、また、一門に嫁いだ者として、公爵家の更なる繁栄と、エリザベートの女帝即位の為の裏工作に奔走いていた。
 しかし、彼等と身近に接する立場であればこそ、公爵夫妻に対しても、その娘のエリザベートに対しても、年々失望の度合いを深めていった。
 ブラウンシュバイク公は、とてものこと国の舵取りができるような器ではなく、むしろ、彼のような男に国政を牛耳らせてはならない典型的な人間だった。
 あの男が全権を掌握すれば、恐らく銀河帝国は、国体を保つことができず、遠からず滅亡するだろう。
 この当時の殆どの帝国人にとって、まだゴールデンバウム王朝の滅亡は、人類の滅亡に等しい感覚だった。
 ギゼラは、フリードリッヒ4世崩御の直後からずっと、「金髪の孺子」と正面対決をする気満々のブラウンシュバイク公を、夫人のアマーリエを通じて諫めようとした。
 しかし、ギゼラの才智を愛で、引き立ててくれた皇后とは違い、娘のアマーリエは、昔から平民出身の彼女をあからさまに見下し、意見に耳を貸そうともしなかった。
 それでも、母親の存命中は、皇后の側近として、また、一門の端に連なる女性として、表面上は穏便な付き合いを続けてきたが、皇后が亡くなると、徐々に遠ざけるようになり、枢軸派との対立が顕著になった頃には、煙たい存在の彼女が面会を申し入れてもなかなか会おうともしなくなった。
 ここに至って、ギゼラは、ブラウンシュバイク家に見切りをつける決心をした。
 そして、この20数年間、互いに持ちつ持たれつの関係だったアデナウアー家に対して、どうか自分達への義理は捨てて、家門の安泰を第一に考えるように願うと言ってくれたのだ。
 その代わり、交換条件として、アデナウアー家が経営する会社の商船で、何とか秘密裏に自分と末娘をフェザーンに運んで欲しいと言うのだった。
 アデナウアーは、その頼みを即答で承諾した。
 ギゼラには、二十代の2人の息子と、ベアトリスより2つ年下の娘が1人いる。
 父親が、先代ブラウンシュバイク公の庶兄である夫は、妻の言い分が理論的に正しいと認めつつも、従弟であり幼馴染でもあるオットーを、見捨てて逃げるわけにはいかないと言い、2人の息子もそれに従うつもりだと言う。
 万一、自分達が全員処刑されたり戦死するようなことになっても、せめて妻と未成年の娘だけはどうしても助けたいというのが、夫の意向であった。
 ギゼラは、一晩夫に縋って泣き続けたが、結局、涙を呑んで、夫と息子達の意思を尊重することに決めた。
 ギゼラ夫妻は、遠からず内戦が拡大し、多くの貴族がオーディンを脱出することになるのを見越して、早々に自分たちの財産を処分していた。
 同時に、亡命用の船を手配してくれるアデナウアーには、多額の謝礼を支払った。
 このお金で、別邸で療養している“妹”達に、少しでも有効な医療を受けさせてやって欲しいと言い添えて、電子マネーを手渡し、アデナウアーも、「必ずそうする」と言って、マネーカードを受け取った。
 但し、アデナウアーは、やはり血の繋がりがないとはいえ、ギゼラの夫である義弟や甥達と殺し合うようなことは出来ないと言って、どちらの陣営にも与せずにオーディンで事態を静観することに決めた。
 一応、爵位のある全貴族の当主に対しては、それぞれの陣営から従軍の要請と、勝利のあかつきの恩賞を約束する文書が届いていたが、アデナウアーは、旧知の医師であるヨーンゾンに、治癒に時間のかかる重度の感染症の病名を付けた診断書を書いてもらい、それを提出することで、参戦を回避した。
 ギゼラの言った通り、両陣営とも、アデナウアー家程度の貴族には、本当に関心がなかったと見えて、本来は小児科医であるヨーンゾンの書いた診断書は、精査されずにあっさり認められた。
 結果的に、地位も財産も少ないことが幸いして、アデナウアー男爵家は中立の立場を維持することができたのである。
 そして、来るべき時がやってきた。
 帝国歴488年4月、シュワルツェン館襲撃未遂事件を発端に、貴族連合軍が次々とオーディンから脱出し、後世リップシュタット戦役と呼ばれる内戦の火蓋が切って落とされた。
 アデナウアー家は、ギゼラ母娘を、無事にフェザーンに送り届けたとの知らせを、手配した商船から受けると、そのすぐ翌週には、軍の戦死者・行方不明者情報データベースへのアクセス権を持つ予備役大佐のアデナウアーは、アルテナ星域会戦に於いて、ギゼラの2人の息子達が戦死したことを知る。
 そして、同年9月、ガイエスブルク要塞が陥落し、ローエングラム軍に占拠されると、何名かの自決した貴族の中に、ギゼラの夫の名前を見つける。
 FTLでこれらの件をフェザーンにいるギゼラに知らせたアデナウアーに対して、彼女は涙を見せることなく、画面が幾筋もの斜線で乱れる中、感謝の意を示すように威儀を正し、深く膝を折って、無言で宮廷式のお辞儀を返した。
 更にその後、オーディン市民を驚愕させたのは、宰相リヒテンラーデ公の急死とそれを発端に枢軸派が分裂し、反ローエングラム陣営に対する激しい粛清の嵐が巻き起こったことだった。その過程で、アデナウアーは、キルヒアイスの死も知ることになる。
 最後の旧勢力が滅びると、ローエングラム公ラインハルトは、帝国宰相と帝国軍三長官を兼ね、政治軍事共に帝国の実権を完全に掌握した。
 枷のなくなったアデナウアー家は、逸早く新たな支配者に恭順の意を示したが、それについて特に優遇されることもなければ、リップシュタット戦役に参戦しなかったことについて咎められることもなかった。
 ただ、平民層には熱狂的に歓迎された新体制の経済再建計画は、アデナウアー家にとっては試練となった。
 これまで、門閥とは程遠い新興の家柄とはいえ、爵位を持つ貴族の特権として免除されていた様々な税が、過去に遡ってまで徴収されるようになった。
 更に貴族が経営する企業に対してのみ行われてきた様々な優遇措置も全面撤廃され、運よく生き残った門閥貴族でさえ、旧体制下と同じ生活レベルを維持するのは難しくなっていた。
 アデナウアー家も、所有する不動産や事業に対して、莫大な追徴課税を受け、別邸とリゾート惑星に所有していた別荘を売り払い、所有する企業の株券を売却して何とか納税し、本宅のみを家族の住まいとして残した。
 父も母もこの処置について、一切の不満を口にしなかった。それどころか父は、
「これが本来あるべき正しい姿なのだよ。極端な富の偏重は、結局のところ、国家の発展を妨げ、最大多数の国民を幸せにすることができない。私達一部の人間が多少の不自由を我慢することで、その何億倍もの人々が幸福になるなら、それが一番いいことだと思っている」
 と言って、新体制の政策を全面的に支持した。
 生活の激変で、我が身を嘆く貴族が多い中、長年平民達とも交流しながら商人として生きてきた父ならではの達観だと、ベアトリスと母は思った。
 とはいえ、現実問題として、これでアデナウアー家が、今までの貴族暮らしができなくなったのも、また事実だった。
 まず、売却した別邸から、6名の叔母達を本宅に引き取り、彼女達一人一人に専従で付いていた6名の介護士の内、再雇用先を探すのが難しそうな1名を残して解雇した。
 続いて、別邸や本宅に仕えていたメイドや料理人、下働きや庭師などもこれ以上雇用が困難となり、同じく解雇せざるを得なくなった。
 ただし、アデナウアー夫妻の性格上、突然職を失う使用人達を、その日までの給与だけで追い出すことはできず、売却した資産の中から、彼らが新たな落ち着き先を見つけるまで暮らせるに充分な金額を退職金として支払った。その為、現金資産の殆どがなくなり、一家の生活は苦しくなった。
 唯一残った不動産である本宅に、男爵夫妻にベアトリスを含む4人の子供達、ダニエラを含めた祖父の7人の養女達、先代から仕える身寄りのない年老いた下働きの老爺と、介護士が一人づつ、計13人が慎ましく暮らすこととなった。
 アデナウアー男爵邸は、爵位を持つ貴族の邸としては、質素で小ぶりな方だったが、それでもその敷地は、平均的な平民の家の20倍はあり、建物の大きさや部屋数も、5、6倍はあったので、この人数で暮らすのに、物理的な不自由はなかった。
 しかし、今までは大した出費ではなかった叔母達の治療費が、今度は重くのしかかってきた。
 アデナウアー家には、ここで、健康なダニエラを除く6名を除籍し、彼女達を身寄りのない貧民専用の医療施設にでも送るという選択肢もあった。実際、そうすれば、贅沢とは言えないまでも、帝国軍大佐である当主の給与だけで、何とか残りの家族も男爵家の体面を保ちながら暮らしていける。
 しかし、アデナウアー男爵は、最初からそんなことは考えていなかった。
「私には、どうしても彼女達を見捨てることはできない。その分、お前達には、苦労をさせることになると思うが、どうか解って欲しい」
 妻と娘に、すまなそうに言う父に対して、ベアトリスの母はそっと父の手に自分の手を重ねて頷いた。
「わかっています。あなたがそういう方だからこそ、私はあなたの妻になったのです。アデナウアー家の為に人生を狂わされた人達です。もし、後宮などに入らなければ、彼女達にも別の幸せがあったでしょう。ですから、最後までこの家で面倒を看るのが、当然のことだと思っていますわ」
 両親の考えに、18歳になっていたベアトリスも同意した。
「私も、単位をとって1年でも早く大学を卒業するわ。そうしたら、お給料のいいフェザーン企業か、安定した省庁務めをして、家計を助けられると思うの」
 父の男爵は、頼もしい娘の言葉に目を細めると当時に、彼女の将来の可能性を狭めてしまうのではないかという不安を抱いたという。
 しかし、ベアトリス自身は、それに対して、せっかく面白い世の中になったのだから、社会に出て、思う存分自分の可能性を試してみたいと言った。これからは、帝国人の女性の生き方も、以前よりずっと選択肢が拡がるはずだというのが、当時からの大学生達の一致した見解だった。
 ベアトリスは、ヘレーネのように大学の寮には入らず、母とダニエラと一人残った介護士と一緒に、6人の叔母達の世話をしながら、邸から大学に通った。
 6人の中では2番目に若い30代半ばの叔母は、精神を病んでいて、タオルに包んだ人形を我が子と思い込んで一日中抱いて過ごしている。ベアトリス達家族は、そんな彼女に話を合わせ、タオルの中の人形を「皇子様」と呼んで世話をしていた。他の5人も寝たきりか、何らかの補助がなければ歩行が困難な状態だった。
 これでもギゼラが残してくれたお金で、帝国内では最良の治療を受けているのだが、症状は進まない代わりに好転もしない。
 大学に入ったベアトリスは、彼女達に、1日も早く地球学を取り入れたフェザーンの最新医療受けさせたいと思うようになっていた。
 また、一人健康で、まだ若いダニエラの将来のことも、男爵夫妻は気にかけていた。
 彼女は、辺境惑星で戦災孤児の為の孤児院で育ち、最初から肉親がいない。里親だった家族の父親が戦死し、売られたというよりは、自ら望んで仲介業者のスカウトを承諾してやって来たのだ。その支度金で、里親家庭は、生活苦で自殺せずに済んだという。
 最初は、こんな機会でもない限り生涯行くことがなかった首都星に憧れを抱いてやってきたようだ。だが、短い後宮生活で経験したことは、彼女の心の奥底に、表層からは見えない影を落としたらしい。
 先代が亡くなり、後宮からお暇を頂いた他の養女達が、親元へ帰っても、既に帰る家のないダニエラだけは、本人の希望でアデナウアー家に残った。男爵夫妻の計らいで、学校にも行き直し、大学にこそ進学しなかったが、高等専門学校で、語学(フェザーン語)と衛生学を学んで卒業した。
 義理の姉達の介護も積極的に手伝い、使用人の殆どいなくなった家で、幼いベアトリスの弟や妹達の面倒もみてくれた。
 男爵夫妻は、それを有難く思いながらも、彼女がこのままこの家の犠牲になって人生を終わらせてはいけないと考え、度々縁談を奨めた。
 皆、堅い職業に就いている生活力のある男達で、人柄も家庭環境も申し分なく、年齢もダニエラと釣り合う若者だった。無論、彼女の事情は承知の上だ。
 しかし、話がある度に、彼女は、いつも丁重に断る。
 ダニエラは、子供好きで、ベアトリスの弟妹も彼女によくなついていて、料理が得意な家庭的な女性だったが、全く異性に興味を示さなかった。
「お会いするだけでもしてみたら? あなたはまだ若いんですもの、これから結婚して、子供を産んで、家庭を持つべきだわ」
 母の男爵夫人が、再度奨めても、ダニエラの意思は変わらなかった。
「今の私には、知らない他人の男の人よりも、この家の家族の方が大切です。お姉様達の世話も、もっと一生懸命やります。メイドと同じ扱いでも構いません。どうか、このまま、私をここに置いて下さい」
 切羽詰まったような表情でそう懇願されては、男爵夫妻もそれ以上無理強いはできなかった。
 実際、ローエングラム政権になり、介護士や使用人を解雇してからは、手が足りないのは事実であり、彼女の介護能力は、この時既にプロ並みだった。
 そんな事情で時は過ぎて行き、気が付けば、14歳で養女となり、16歳で後宮入りし、18歳の時にこの家に戻ったダニエラも、20代半ばを過ぎていた。
 しかし、そんなアデナウアー家を更なる悲劇が襲う。
 世はかつてない速度で変革を遂げ、誘拐された皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世がこともあろうに同盟に亡命するという信じられない事件が起こると、帝国軍の大艦隊は、同盟領に向けて出撃していった。
 父のアデナウアー大佐は、巡洋艦の艦長として従軍したが、バーミリオン会戦の激しい戦闘で艦は大破し、名誉の戦死を遂げたとの報が入る。
 男爵家の者として、職業軍人の家族として、ベアトリス達はこの知らせを表面上は冷静に受け止めたが、それぞれの部屋に戻り、翌朝まで泣き腫らしたことは、朝食に食堂に集まった各々の顔を見れば明らかだった。
 葬儀は、男爵家の当主として、また、戦死による二階級特進で「アデナウアー少将」として厳粛に執り行われたが、遺体のない空の棺での葬儀は虚しかった。
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