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イノセント・プリンセス(1)
「ねえ、アル。私達、いったい何時まで、こんなふうにしていればいいの?」
 以前はかわいいと思えた女の甘えた口調が、今の男には耳触りだった。
「そ、それは、あと少しの間ですよ、リザ。こちらでは、オーディンと違って、元リップシュタット連合軍派の貴族に対する差別や偏見もないし、もうすぐ外を堂々と歩けますとも。よいタイミングを見計らって、今年中に皇帝陛下に願い出て、あなたとの結婚を報告するつもりです」
 それでも男は、女を愛称で呼んで必死に宥めると、何とかその場をやり過ごそうとした。
 今、この女に騒がれて、自分が匿っていることが公になれば、俺の将来は終わりだ。
 新王朝は、連座制を廃止したから、自分も女自身も罪に問われることはないだろうが、確実に出世コースから外れるだろう。
 そうなれば、せっかくの今までの苦労が水の泡だ。
 非主流と言われた貴族の次男として生まれた自分に、漸く運が回ってきたのだ。それを、こんなクリームバター頭の女一人の為に潰されてたまるか。
 だが、そんな男の思惑など全く気付かない様子で、女は嬉々として胸に手を当てた仕草で目を輝かせた。
「そう。私なら本当は、お式は新無憂宮で挙げるべきなのだけど、ここでは仕方ないわね。でも、聞いて、アル。フェザーンには素晴らしい結婚式の施設があるのよ。最新ファッションの発信地もこれからは、フェザーンになるというし、早速、一番有名なデザイナーにウエディングドレスを発注しなくちゃ」
「あ、ああ…そうですね」
 男は内心で舌打ちしながら、曖昧に頷いた。
「それから、当然、コールラウシュ家のエルフリーデよりも豪華なドレスでなければいけないわ。私の方が身分が高いのだし、相手の男も下級貴族なんでしょう。あなたは伯爵家の出だもの、当然、あの2人よりも私たちの方が格上の式を挙げなければ、帝国の権威が失墜してしまうわ」
 無邪気に言う女の言葉に、男は今度は見えないように横を向いて本当に舌打ちした。
 この女はまるでわかっていない。
 ゴールデンバウム王朝は滅びたのだ。跡形もなく。
 現政権下で、皇帝以外で公職に就いている者が、誰がどう国家の元勲である帝国元帥より盛大な結婚式を挙げられるというのか?
 下手にそんなことをすれば、憲兵隊か内国安全保障局あたりに格好の粛清材料を与えてしまう。
 第一、俺はこの女と結婚するつもりなどない。
 当人は、当たり前のように決めてかかっているところもまた、今となってはどうしようもなく癇に障る。
「結婚したら、もう少し街の中心に近いところの家に移りたいわ。フェザーンには、豪商が多くて、そういう人たちが手放した邸宅がたくさんあるって言うし。仕えていた侍女やコックも領地から呼び寄せて、また一緒に暮らしたいわ」
 その領地とやらは、とっくにないよ、という言葉を、男は辛うじて呑みこんだ。
 フェザーンは、全てに於いて帝国とは考え方が違う。
 人手をかけるのが最上の贅沢であり帝国貴族の証なのだという非合理は、ここでは通用しないばかりか、嘲笑のタネだ。
 殆どの単純作業は、便利な家電製品とロボットがやってくれる。
 余程の事情がない限り、使用人を雇う必要などない。
 政変で世の中がひっくり返って2年、新王朝に代わって3ヶ月経つというのに、この女は未だに世の変化に全く無頓着だ。しかも、もうすぐ19にもなろうというのに、まるで幼児のように自分の身の回りのことさえ何一つ自分でやろうとしない。
 相変わらず、周囲の人間が無条件に自分の為に働くのが当然と考えている。
 最初は、その育ち故に仕方がないと割り切ろうとしていた男も、最近では腹立たしさを抑えきれないでいた。
 一人では何も出来ない女の為に、彼は偽名でこの部屋を借り、自分が生まれる前から仕えている忠実な老婦人をわざわざオーディンから伴って付けてやっている。この婦人は、代々使える忠義者故、主人の言い付けに従って、誠心誠意彼女の世話をしているが、それでも「リザ」と呼ばれたその女は、かつて大勢の侍女に囲まれて暮らしていた時代を思って、不満を隠そうともしない。
「王朝は変わってしまったけど、あなたが尚書になって、私が尚書夫人になれば、何とか我慢できるわ。新しい皇帝は質素なんでしょう? ならば王宮より立派な家に住めばいいことだし。使用人の数も下級貴族出身の皇帝より増やせば、亡くなったお父様やお母様だって、ヴァルハラで安心なさるわ」
 その金はどっから出るんだ!
 無邪気に夢を口にする女に、男は今度こそ明確な殺意を持った。
 もう限界だと思った。
 この女が生きている限り、俺は破滅だ。
『この女を早く始末しなければならない。しかも、絶対に自分が犯人と判らぬように』
 男は固く決心すると、目の前の女に、冷たい目で作り笑いを浮かべた。



 新帝国歴1年10月15日昼。
 皇帝主席秘書官にして、フェザーンに於けるTIEG−36型感染拡大防止対策室室長、ヒルデガルト・フォン・マリードルフ伯爵令嬢は、部下であり、今では大切な僚友でもある3名の女性士官達と共に、宇宙港の待合室で軌道エレベーターの到着を待っていた。
 彼女達にとって、もう一人の友人であるヘレーネ・シェリング准尉を迎える為である。
 到着アナウンスと共に、降りてきた軌道エレベーターの扉が開くと、約一ヶ月ぶりに見る軍服姿のヘレーネの優美な姿が現れた。
 すぐ後には、帯同した民間船で一緒に来たカルツ夫人が控え、隣には軌道上まで出迎えに出た真新しい准将の軍服を身に纏ったコンラート・リンザーもいる。
 ヒルダ達は、3人に同時に駆け寄った。
 リンザーとヘレーネは、この移転を機に同じく准将待遇となったヒルダに対して律儀に敬礼し、カルツ夫人は深く腰を落として宮廷風のお辞儀をしたが、スーツ姿のヒルダは、柔らかな笑顔で「御苦労さまです」と、3人に丁寧に会釈を返した。
 リンザーが、ヘレーネとカルツ夫人の手荷物をワゴンタイプのランドカー積み込むと、一同は早速、先発隊の文官が手配したというリンザーの宿舎へと向かった。
「…こんな…立派な家なの…?」
 到着するなりヘレーネは息を呑んだ。
 宮廷女官出身で、長年リッテンハイム候の邸に仕えていたカルツ夫人は、さすがに冷静だったが、それでも、質素と聞いていた新王朝で、将官とはいえ若手軍人の宿舎としては豪華過ぎる家に驚いている様子だった。
 コンラート・リンザー准将の宿舎は、ワーレン艦隊が仮本部として接収したビルからランドカーで5分程、徒歩でも15分くらいの場所の一等地にあった。
 仮の大本営となっているホテルにも近く、周囲には同じような豪邸か高級サービスアパートメントが立ち並ぶ。
 リンザーの宿舎は、その中でも広い方で、1階には広いパーティールームや屋内プール、各種トーレーニングマシンを取り揃えたジムがあり、2階は2つの主寝室に6つのサブ寝室という造りだった。
 元は高利貸しで財を成した富豪の別邸として建てられたらしく、築2年という新築に近い物件で、最新テクノロジーを屈指した設備が整っている。
 その為、これだけの豪邸でありながら、使用人部屋らしきものがない。
 カルツ夫人は、当初、当然のようにサブ寝室の一つに入るつもりでいたが、リンザーとヘレーネが反対側の主寝室を自室とするよう強く勧めた。
「言ったじゃない? 使用人ではなく家族として一緒に暮らしたいって」
 ヘレーネにそうは言われても、階級制度が染みついている夫人には、どうしても主夫妻と同等の部屋に住むということが恐れ多く思えてならない。
「でも、このようなお部屋は、大切なお客様の為にとっておくのが…」
「そんな高級な客なんぞ来る予定はないですよ。泊るとすれば、せいぜいうちの家族か、俺やヘレーネの友達くらいです。他に6部屋も空いてるんだから、来客用にはそっちで十分じゃないですか」
 リンザーも苦笑しながらヘレーネを後押しする。
「そうですわ。カルツ夫人。ここはフェザーンで、ローエングラム王朝の統治下です。あなたも、そのローエングラム王朝の皇帝陛下にお仕えするリンザー准将とお暮しになる以上、新王朝の方針に従うべきですわ」
 最後に、皇妃の最有力候補と言われている伯爵令嬢の言葉が決め手となり、漸く夫人は承知したのだった。
 ローエングラム体制下で、これまで得ていた不当な利益や特権を取り上げられたのは、帝国領の門閥貴族達だけではなかった。
 フェザーンに於いては、以前から野放し状態だった、富裕層に有利な税制や、地方星系からの出稼ぎ労働者等の最低賃金の引き上げ、貸金業の利息上限の引き下げなど、富の不均衡に繋がるものが悉く改正された。
 これらは、中流層以下の一般市民には絶大な支持を得る一方、法改正により業績が悪化したり、経営権を手放す大商人を大量に生んだ。
 それは、同時に、大量の失業者を産むことにもなっていた。
 これらの没落商人達は、この1、2年で相次いで自分の資産を放出している。
 大本営の移転が布告されると同時に、先発した工部省に、需要が見込まれる高官用の宿舎として、彼等の建てた豪邸の一斉売り込みが始まった。
 新政府は、一連の改革による急激な変化が、経済破綻に繋がることを懸念し、救済措置の意味もあって、それらの邸宅の一部を買い上げたり、借り上げたりした。
 とはいえ、急な移転布告であったことで、武官も文官も大部分が単身での赴任であり、何部屋もある広い家を必要とする高官は少なかった。
 特に、平均的に若いローエングラム王朝の軍高官の中では、独身者が殆どで妻帯している者の方が少ない。
 伯爵令嬢のヒルダも、ヘレーネの同期3人も、接収したホテルの一室で暮らしているし、それで十分快適だった。
 そんな中で、「他同居人2名」と申請したリンザー准将は、豪邸を宛がうのに格好の人材だったのだ。
「フェザーンの豪商の贅沢はこんなもんじゃないわよ。ロイエンタール元帥の宿舎なんて、ここの4倍はあるそうよ」
 大本営所属で、一番事情通のアンナが笑って言った。
「まあ、あちらさんは準皇族扱いの公人で、長年仕えている切るに切れない使用人も大勢いるらしいからな。我々とは事情が違うだろう」
 リンザーが訳知り顔で言うと、ヘレーネも頷いた。
「そうね。それに、今ご懐妊されていらっしゃるので、これから家族が増えることを考えれば、広い家も役立つことでしょう」
 目を細めるヒルダの言葉に、ヘレーネとカルツ夫人は同時に「え?」と声を上げた。
 サビーネの同級生が、母親になるという事実は、2人にとって言葉に尽くせない感慨があった。
「先週公式発表されたの。こちらでは、連日この話題で持ち切りよ。ご出産は来年の5月ですって」
 沈着冷静なベアトリスが珍しくゴシップネタに関心を示しているようだ。
「まあ、少し若すぎる気もするけど、あんなに仲がよろしいんだし、いいんじゃない?」
 ヘレーネから2人の実態を聞いて知っているアレクサンドラことサーシャも、旬の話題に興味津々の様子だった。
「何にしても、おめでたいことだわ。久しぶりの明るい話題で、平和な世を象徴する出来事になってくれればいいのですが…」
 ヒルダが、心の底から願うような口調でそう言った。
 バーラトの和約により、150年の長きに渡る同盟との不毛な戦争が終結し、漸く世は平和な時代に入ったはずである。
 しかし、8月に起きたエル・ファシル星系の独立宣言と、まだ非公表だが、高等弁務官として派遣されているレンネンカンプの訃報、それに伴うヤン・ウェンリー一党のハイネセン脱出など、新たな戦乱を予感させる事件が続いている。
 どうかもう、これ以上、無益な血が流れませんように…
 ヒルダは、祈るような気持ちで事態を静観している。
 その憂いを秘めた美しい横顔に、ヘレーネは暫し見惚れていた。
 一同は、そのままリビングで、明後日から出仕するヘレーネに現在の対策室の状況説明を行った。
 カルツ夫人が、早速台所に入り、人数分のお茶を淹れ始めたが、音声指示の最新キッチンに少し戸惑ったようだった。
「フェザーンは、情報インフラが整っていることもあり、今のところ、感染の拡大は抑えられています」
 ヒルダは、早速ヘレーネに電子ファイルの資料を手渡しながら言った。
「そうですか。あの…あの事件の捜査はどうなっていますか?」
 ヘレーネは最も気になっていることを訊いた。
 サビーネの事件は、軍と警察が連携して事件に関わった者達の特定がほぼできたことはオーディンを発つ前に知らされていたが、その後の進捗状況の情報がない。
「既に、事件に関わったと思われる人間のうち、存命の者は全員逮捕されて、現在、検事の取調べを受けています。来週にも全員起訴され、早ければ来月初旬にも裁判が始まるはずです。シェリング准尉とカルツ夫人にも証人として出廷要請があると思われますので、そのつもりでいらして下さい」
 ヒルダの、事務的だがヘレーネとカルツ夫人の心情を気遣った言葉に、2人は同時に頷いた。
 もとより、2人ともサビーネを死に追い遣った者達の罪を糾弾するのに、労力を惜しむつもりはなかった。
「初めての恒星間航行で、お疲れでしょう。今日と明日はゆっくり休まれて下さい。その代わり、明後日からは激務になることを覚悟して下さいね」
「望むところですわ。室長」
 ヘレーネが少し茶目っ気を見せて応じると、ヒルダは安心したような微笑を返した。
 どうやら、この女性は、たった一人の肉親の死を乗り越えたようだと、ヒルダは思った。
 ヘレーネとカルツ夫人を残して、他のメンバーはそれぞれ業務に戻る為に対策室のオフィスへと戻っていった。
 ヒルダだけが、一人別の用事で宮内省へ出向く為、迎えの車がくるまでの少しの間残る形となった。
 数分もすると、邸の前に宮内尚書の差し向けたランドカーが見えたので、ヘレーネとカルツ夫人も玄関先まで見送りに出てきた。
「帝国とは全てが勝手が違って、色々と大変なことがあると思います。何か困ったことがありましたら、何でもご相談下さい。私でできることでしたら、できるだけのことはしますわ」
 ヒルダは、生まれてからオーディンを一度も出たことのないヘレーネとカルツ夫人を最後まで気遣った。
「そんな…フロイラインにそんな、恐れ多い…」
 伯爵令嬢の思い遣り深い言葉に、カルツ夫人は恐縮しながら平服する。
 彼女のこれまでの経験上、生粋の門閥貴族からこのような労りを受けたのは初めてのことだった。
「フロイライン・マリーンドルフは、前世で余程善行を積まれたのでしょうね」
 皮肉な気持ちは微塵もなく、ヘレーネは素直に思った通りのことを口にした。
 彼女は元々生まれ変わりだのといった非科学的なことを信じている人間ではなかったが、サビーネの最期を思うと、どうしても来世の存在を願わずにはいられなかった。その過程で、もし来世があるのなら、当然前世もあるはずで、今世で一点の曇りもない幸福に恵まれている人がいるとしたら、それは前世の行いの結果なのではないかと、ふと考えてしまったのだ。
 ヒルダの全てが完璧に揃ったように見える境遇を、以前は妬ましかったが、今は違う。もし、人間に前世というものが本当にあるとしたら、彼女はきっと、自分の身を犠牲にして多くの人に尽くすような人生を送ったに違いない。だから、今世が、こんなにも恵まれているのだ。ヒルダとは、そんな風に思わせる女性だった。
「シェリング准尉…」
 だが、振り返ったヒルダのブルーグリーンの瞳は、どこか寂しげで憂いを湛えていた。
「完全に幸福な人間などいないと、私は思っています」
 静かな声が、まるで自分自身に言い聞かせているように聴こえる。
「私は、あなたが思っているほどの聖人君主ではありません。確かに今までは恵まれて育ってきましたが、それが死ぬまで続くかどうかはわかりません。私もあなたと同じ人間です。時に判断を誤ることもあれば、間違っていることがわかっているのに、それを言う勇気が持てないこともあります」
 フェザーンの大きな太陽が沈んでいく逆光を背に、ヒルダのどこか悟ったような、諦めたような口調が、ヘレーネの耳朶に残った。
「私は、創造主は、意外と公平なのではないかと最近思っているのです。確かに私は、この帝国で何不自由なく恵まれて育ちました。現在でもそれは続いています。多くのものを失くした方々に比べて、今は、自分の幸福を理解しているつもりです。でも、恥ずかしながら、私は、自分が幸福だと気付いたのは、大学に入ってからのことでしたから、やはり何もわかっていなかったのかもしれません」
 ヘレーネは、この誰よりも智謀に優れた女性の考えを最後まで聞きたくて、黙って耳を澄ませた。
「だから、その無知に対して、私はこれから罰則を課せられるのかもしれません」
「罰ですって? フロイラインが?」
「ええ、或いは私は、あなたや、コールラウシュ伯爵夫人が手に入れた愛を、一生手にすることはないかもしれません」
「そんな…フロイライン程の方がなぜそのように…?」
「肉親を失い、苦労したあなたに、大神オーディンは、リンザー准将を遣わされました。同じように家族を一度に失くされた伯爵夫人は、ロイエンタール元帥という新しい家族を得ました。でも私には、私の為に生き方すら変えてくれるような無償の愛を得ることは一生かなわないかもしれません」
 まだ人生の3分の1にも満たない年数しか生きていなはずのヒルダの言葉は、それでも妙に説得力があった。
「傲慢を承知の上で言わせて下さい。シェリング准尉。私はあなたが羨ましいです」
 心臓を射抜くような言葉というものが、本当に存在することを、ヘレーネは初めて知った。
 そして、なぜヒルダがこのように言うのか、やっと理解した。
 この人は、ずっとあの宇宙の覇者に、無償の愛を捧げてきたのだ。
 彼女だけが一方的に相手に尽くし、相手は彼女の為に決して自分を動かすことはない。
 それでも彼の傍に仕え、常に彼と彼の統治する帝国の為に命をかけて職務を全うしようとしている女性。それが、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフという人なのだ。
 これ程の美貌と才智に恵まれながら、何という無私の心だろうか。
 いや、むしろこれは、ラインハルト・フォン・ローエングラムという一人の男への、究極の愛の形なのだろう。
 ヘレーネには、一瞬、ヒルダがまるで殉教者のように見えた。
 やがて、迎えのランドカーが静かに滑り込んでくると、伯爵令嬢は、ヘレーネ達に一礼して、音もなく去って行った。
 車が視界から完全に消えるまで、ヘレーネはいつまでも小さくなっていくランドカーを見詰めていた。
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